20数年ぶりに西表島を訪れた。特に何か目的があった訳ではない。宿の主人からは2泊3日の間、「どう過ごしますか」と遠回しながら、大自然へのお誘いを受けたが「少し海に浸かるだけで、あとは何もしません」とだけ伝えた。
元々、旅という大袈裟のものではなく、リックを背負っただけのキャンプが好きだった。ましてや自由人となったいま、原稿の締め切り時間から解放されたいま、誰に憚ることなく無計画でいいのだ。
それにしても西表は変わった。観光客が増え、それを受け入れる民宿やペンション、ホテルが産地不詳のタケノコ状態。島の産業の主役となった。
5,6年前に慶子は本土資本の大型ホテルの進出が環境破壊につながる、と危惧し地元の人々と反対運動に立ち上がった。そのホテルの前の月が浜は、いま防風林のモクマオオ
は根っこがむき出しになり、痛々しい。
「開発と保護の調和」と人は達観したように言う。だが自然環境は、いま生きる私たちだけのものではない。過去からの授かりもので、未来への預かりものであることに心すべきだ。久々に熱帯魚と魚になって、そう思った。
今回泊まったのはマリンロッチ「アトク」。少し諦めかけてはいるが、ペンション経営が夢だった。そのことを知っている友人の寺田麗子(敬称略)は僕のことを民宿のオヤジと呼ぶ。
何度も言っているのだが、僕はペンションのオーナーなのだ。

写真説明 ホテルの前のモクマオオだけが侵食状態になっている