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糸数けいこの活動日誌
by itokazu-keiko
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自民党を破った女、糸数慶子の「戦争と平和」

 徴兵制ができる前に

 戦争が近づいている恐怖感が、私を当選させた――。先の参院選の1人区で自民党は圧勝し、全国で落とした選挙区はわずか2つ。その1つが沖縄選挙区だ。沖縄社会大衆党というローカル政党から出馬した糸数慶子参院議員は、「平和の一議席」と呼ばれる勝利を手にした。その背景には沖縄の人々が、戦争への危機感を高めていることがある。尖閣問題、そして改憲…。その先に戦争が見えるという。「本土」にいては分からない未来を、沖縄県民はとらえている。その代弁者、糸数議員が「戦争と平和」と語る。(聞き手は金田信一郎)

 ――先の参院選では、自民党が圧勝する中、糸数さんは自民党候補を破って当選しました。奇跡的な勝利に見えますが、何が糸数さんを後押ししたのでしょうか。

 糸数:自民党が圧勝したのは、民主党政権が国民の期待を担って政権交代を果たしたにもかかわらず、期待に応えられなかったからです。それが3年半も続いたことが、民主党政権の崩れていく1つの要因だったと思うんですね。最初にマニフェストで「消費税を上げない」と言いながら、最終的には総理自らが消費税を上げてしまった。TPP(環太平洋経済連携協定)にも参加する、と。おまけに解散総選挙までやってしまった。

 ――「裏切り」の連続だったわけですね。

 糸数:だから、それが国民としては「おかしい」ということで、結局、自民党にもう1回チャンスを与えたんだと思います。でも、自民党も票を全部集めてみれば、決して「大勝した」とは言えないと思うんです。で、私がなぜ勝利したのかというと、やっぱり沖縄の特殊な地域性だと考えてます。

 ――米軍基地問題ですか。

 糸数:はい。例えば、去年の衆議院選挙で当選した西銘恒三郎議員が、公約を破ったことも大きな要因だと思うんです。つまり「普天間基地は県外へ」というのが今の県内世論で、沖縄では、そういうことを言わないと選挙に当選しないということを自民党も知っている。だから、それを高く掲げて選挙運動をして、勝ちました。ところが、それから3カ月もしたら安倍政権になって、その後、掲げていた公約を下ろしてしまった。つまり自民党の党中央の政策を受け入れたんです。沖縄県民はそれを望んでいなかった。これは「裏切り」じゃないか、と。

 だから、沖縄の住民はこのことに対する不信感を抱いています。そこに自民党から安里(政晃)さんが、参院選に出馬して、私と戦うことになりました。私はずっと「普天間基地は県外、国外」と言っています。辺野古に新しい基地は造らせません、と。安里さんも、「普天間の県外移設」ということはおっしゃっていました。でも、「普天間基地は辺野古には造らせません」とは言いませんでした。

 「自民党がどういうことを言うのか」というのは県民は気になりますよね。党本部とねじれた政策が、果たして通用するのかどうか。もう1つは、前に裏切った衆院議員が、同じ自民党にいるじゃないか、と。ですから、もうこの政策(県外移転)に関しては、信じられない。そこに、おまけに安倍(晋三)さんが来て、このことには一切触れずに、沖縄の基地の負担軽減だけをおっしゃった。でも、負担軽減の先に何があるか。沖縄県民が、オスプレイの配備に対して「ノー」と言っていることをまったく無視して、「再配備します」とおっしゃったわけですよね。

 ――「普天間基地は辺野古へ造るのが一番いい」と言っているわけですよね、自民党は。それは民主党政権と同じことを言っているわけです。だったら、沖縄県民の思いからすれば、たとえ自民党でも公明党でも、それは「ノー」じゃないの、と。すでに、これだけの米軍基地があるにもかかわらず、またオスプレイを追加で配備するんですから。

 自民党は信用を失った

 糸数:ですから、まず勝因の1つは、自民党の政策的なねじれがあった。党本部と沖縄県連との違いがあって、当選後に発言を変えて裏切った人の制裁は一切しないわけです。衆議院の西銘さんと参議院の島尻(安伊子)さんは、県連と違うことを言っている。そういう2人に対して、県連が「あなたたち、違うんじゃないの」と言わない。制裁もしない。「違うことを言っているから、県連から出ていけ」とも言わない。ですからもう信用されないんです。それが、私が支持された要因だったと思います。

 ――なるほど。そうすると自民党系議員は、沖縄で何を言っても、それはポーズでしかないと受け取られる。

 糸数:そのことを、もう県民は見破ったわけですよね。それで3万4000票もの差が出たということなんです。政治の効果から言えば、私たち社大党(沖縄社会大衆党)というのは沖縄だけの地元の政党で、ここ(国会)では政党としては認められていないので、政党助成金もありません。それでも、県民は私を選んでくださった。

 まあ、カネをかけずに戦うしかないので、政策がブレていないという政治姿勢を示していくしかありません。それが、県民の皆さんの心に伝わって評価されて、勝利につながったんですね。

 ――振り返ってみれば、沖縄県民は、2010年の鳩山元首相の「最低でも県外」という発言に翻弄された経験があります。かなり、政治家やその発言を見極める眼力を持っている、と言っていいのではないでしょうか。

 糸数:そうです。ちゃんと見ています。政策をきちんと見てくださったと思います。だから、「安里さんはそう言っているけれども、本当にやれるの」と。一度だけ基地問題に対して街頭演説でお話をされたけど、それ以降は一切、口にしなかった。福祉と子育てについて繰り返していましたが、人の気持ちは揺さぶらなかったわけです。それが、一番難しい問題とは分かりながら。

 今、沖縄は「子供の貧困」が深刻な問題で、教育や保育の環境を改善しなければならない。待機児童も多く、大きな課題になっています。ですから、基地問題と同列ぐらいに私もこのことを取り上げ、子育てをどうするか考えてきました。

 そのために、専門家を呼んで、沖縄の自治体の議員たちと一緒に勉強会を開いてます。なにせ、出生率は日本一高いので、それだけ子供に対する政策に力を入れていかなければならない。これは与野党に関係なく、県民の議員に対する大きな期待があるんです。子供の貧困をどう解消していくか。

 ――具体的には、どのような状況なのでしょうか。

 糸数:東京都に次いで、待機児童が全国で2番目に多いんです。

 ――それは、待機児童数が東京に次ぐ人数ということですか。

 糸数:そうです。だから、人口比率にしたら…。

 ――大きな数字になりますね。

 糸数:はい、大変なんですよ。これは、仲井眞(弘多)知事も常々、「日本一、子育てのしやすい沖縄県にする」とおっしゃっている。しかし、なかなか待機児童が解消されないんですね。再選された横浜市長がずっと取り組んで、「待機児童ゼロです」と今、おっしゃっていますよね。

 ――林文子市長の待機児童解消策は、報道されて有名になりましたね。

 糸数:企業参入を促して保育園を次々と造って、子育て世代の母親や父親が、子供をきちんと保育をして、働ける状況を作っていく。それを実現しない限り、やはり貧困解消にならない。沖縄は県民所得も低いし、どうやって政治がそこに光を当てて、手当てをしていくか、大きな課題になっています。それでも、基地問題が次から次に発生する。参院選が終わってからも、オスプレイの再配備がありましたし、ヘリコプターの墜落事故も起きました。

 ――ちょうどオスプレイの配備が進められていた時だったので、不安が広まり、問題が大きくなりました。

 糸数:だから、本当は子育てや高齢化社会の問題、とりわけ介護などの課題も、議員として取り組んでいかなければならないのに、そこが先送りされちゃうんですよ。つい、基地問題が先だ、と。なので、2つの会合が同時にあったら、どちらに行くかと言ったら、やっぱり基地問題に行かざるを得ないんです、どの議員も。

 なので、他の都道府県の県会議員や市町村議員だったら、普通の生活の中で出てくる課題、例えば教育や子育て、高齢者、生活保護などの問題に真っ先に手を付けられるんです。でも、沖縄ではそうはいかない。そこに、基地があることによる「政治の格差」が出てくるわけです。

 なので、安里さんはそうした問題をずっと言っていたんです。ご自身が沖縄偕生会という老人ホームを経営していますから。同時に、子育ての真っ最中でもあります。だから、「僕はこういうことをやりたい」「40代、子育て世代の代表です」と言って、(社会を)チェンジしていきたい、と。若い人たちの気持ちを吸い上げて、そうした課題を国会の中に持ち込んで、解決していきますとおっしゃったんですけれども、基地問題に隠れて、その辺が評価されなかったんです。

 安倍首相の「逆・応援演説」

 ――糸数さんは対立候補も冷静に見ていたんですね。

 糸数:彼の言っていることは、とても大事なことです。しかし、選挙ではブレるかどうかが勝負を決めます。残念ながら、基地問題では、中央と対峙できるような政策を出して、それを守りきれるかといったら、(自民党の)先輩たちがすでに(約束を)破っているから、信用されないんです。それが、実は私の勝利につながりました。しかも、安倍さんが(沖縄に)来て、余計、彼の形勢が悪くなった。本当は沖縄の自民党県連としては困ったと思うんです。「アベノミクス」と言ったって、また自衛隊を与那国島に配備するとか、石垣島に配備するとかいうことになれば、「ノー」という人がかなりいるわけですから。もちろん、賛成の人もいますよ。でも、「ノー」という人たちは、余計、選挙運動に情熱を傾けていった。

 ――安倍さんが応援演説に来たことが、逆に糸数さんに追い風になったわけですね。

 糸数:そうです。でも人だかりはすごかった。沖縄県庁前に安倍さんが来た時の集会は、2000人ぐらい動員していました。そこから200メートルほど離れた場所で、私は集会をしましたが、100人もいなかった。

 ――それほど集客力はあった、と。

 糸数:だから、私を応援する人は、もうびっくりしますよね。向こうの大集会を見て、それからこっちに来るから。「何なんだ、これは」と。ですけど、演説に集まる人数の問題ではなかったんですね。表には出てこないけど、私を応援する人は、やはり沖縄にいるんだ、ということを痛感しました。いくらカネを持ってきても、どれだけ国会議員を投入しても効果がない。防衛大臣と外務大臣を除けば、ほとんどの閣僚が来ていますからね。あまりの閣僚の数に、県連はどこに配置するのか困ったそうです。

 ――それぐらい、大量に送り込まれたわけですか。

 糸数:もう、どんどん来るわけですよ。しかも、総理は手ぶらでは来ませんから、選挙の費用というのはどんどん投入されたと思います。で、カネもないし、人も集まらない糸数慶子が、なぜ当選したのかということです。それは政策で勝ったし、私が今までやってきたことが、県民には支持されているということだと思います。

 ――物量では完全に不利だったわけですね。

 糸数:これだけ歴然とした選挙区は他になかったと思いますよ。

 ――沖縄県民はこれから先も、簡単にブレそうにないですね。

 糸数:そうです。ブレません。

 ――簡単に人が変わることは考えにくい。

 糸数:そうですね。ただ、辺野古の埋め立て申請に対して、知事がどう判断を下すか注目されます。果たして、印鑑を押すのか、押さないのか、とても大きな県民の関心事ですよね。

 カジノは沖縄に合わない

 ――仲井眞知事は、今のところ「県外移設」という主張を続けています。

 糸数:そのまま貫いてくれると期待しています。ただ危ういところは、安倍政権の政策で、今、那覇空港にもう1本滑走路を増やす予算が付いています。政府はこれまでの3000億円にプラスして500億円を出すと。知事がブレる要因になりはしないかと県民は心配しています。

 ――その時に、県外移設を撤回してしまうわけですか。

 糸数:取引するんじゃないか、と。つまりアメをいっぱい持ってきたので、その代わり辺野古移設というムチを受け入れる。「辺野古はどうするんだ」と言われた時に、知事が「いやあ、これは譲れません」とおっしゃるのか、「分かりました」とおっしゃるのか。ここはまだ結論が出てないところです。

 ――その判断をする上でも、糸数さんが勝利を収めたことは大きな影響がある気がします。

 糸数:大きいですよ。とても大きいです。

 ――そうですね。仲井眞知事も、その結果を横目で見ている。

 糸数:3万4000票という差は大きい。知事も、安里さんに勝ってほしかったはずです。でも、そうならなかった。つまり、県民はちゃんと見ていますよ、と。態度を変えたら許しませんよ、ということでしょうね。

 ――経済問題もうかがいたいのですが、米軍基地が縮小されていく中で、沖縄はどの産業で発展を目指しますか。

 糸数:今の沖縄は、観光が県内の収入を支えていますよね。それで、基地関連収入は沖縄経済のたった5%にすぎません。観光産業で15%を上げています。ですから、沖縄は自然を大事にしながら観光産業を今後も発展させていくことです。また、空港の滑走路が1本増えることになるので、国際線の離発着も増えていくことになり、物流が沖縄からアジア各地につながっていきます。

 ――全日空が始めた物流ハブなどが注目されていますね。

 糸数:はい。もちろん、問題点も多く残っていますが、大きく沖縄を変えていくと思っています。だから、私の経済政策は、やはり観光を中心に、どうヒトとモノを動かすか。観光客がこれだけ来て、「地産地消」と言われながら、沖縄の農産物や水産物はまだ、あまり提供されていません。でも、観光客は「長寿県・沖縄」の食はアジア各国、とりわけ香港や中国の富裕層に高く評価されているんです。

 ――もっと沖縄本来の「食」をアピールすれば、カネが落ちると。

 糸数:本物の沖縄の食材を観光客に提供して付加価値を高めれば、もう2万9800円とか3万9800円という観光(料金)ではない、高付加価値の観光関連産業が伸びていきます。1つのカギは「食」ですね。アグリビジネスもそうですが、無農薬で健康的な食材を提供して、お客さんを呼び込んでいく。それと医療ツーリズムです。観光しながら医療も受けてもらう。この取り組みは、もう始まっていますが、人材も育てながらもっと活発にしていきたいと思っております。

 そのためにも、沖縄の米軍基地を返還させて、跡地の利用を促進していきたいんです。(すでに基地が返還された)おもろまちや北谷町は、数字として経済効果が出ています。そこで、観光産業と跡地開発をドッキングさせて、相乗効果を出していく。そのことに関しては、自民党の多くの方も、同じような考えを実は持っています。そこで気になっているのは、浦添の米軍のキャンプキンザー(牧港補給地区)は返還されると日米両政府が言っていますが、そこにカジノを造りたいという人たちが多いんです。それは、私と意見が違います。観光に力を入れることまでは同じですが、「ナイトライフはカジノ」と言っている。

 ――糸数さんは以前に韓国のカジノを視察されています。やはり、地域が廃れてしまうという影響を懸念されているのでしょうか。

 わざと「機能しない特区」を作る

 糸数:そうです。健康的で元気なビジネスでないとダメなんです。夜、隠れてやるようなビジネスは合わないんですよ。もっと開放感があって、開けっ広げなビジネスが、沖縄には相性がいい。賭け事などはなくても、沖縄の観光は十分に成長できるんです。そのために、ユネスコの自然遺産に登録されるように努力していきましょう、と。だから、今の北部訓練場は返還してもらうしかないんです。

 ――沖縄本島北部にある、7800ヘクタール近い巨大な米軍施設ですね。

 糸数:奄美と同じで、何度も世界遺産に候補地として挙がるんですけど、巨大な米軍基地を抱えているから「ダメだ」と取り下げられてしまいます。だったら、返還してもらうしかない。「米軍基地が、沖縄の経済発展における諸悪の根源」と言われるのは、この事実に(理由が)集約されています。

 基地返還と経済発展は密接につながっています。前回の安倍政権の時もそうでしたが、一国二制度で沖縄に金融特区の制度を与えている。でも、制度だけで中身が伴わないので、参入する企業が少ないんです。

 ――具体的には、どういう問題で機能しないのでしょうか。

 糸数:例えば、雇用人数を20人以上にしないと税の控除が受けられなかったんです。私は米国やアイルランド、シンガポールなどの金融ベンチャーを見てきましたが、働いている人は3~5人ぐらいです。IT(情報技術)を駆使しているから、その規模でも会社としては立派に成り立っている。それなのに、参入のハードルを高くして、「20人雇わないと、10年の法人所得の控除を受けられない」などという。これでは、企業が「来たい」と思うような魅力的な制度にはなりません。まあ、10年たって機能しなかったので、やっと10人に制限を下げたんですけどね。

 名前だけ観光特区とかIT特区、金融特区と言っている。でも、特区らしく制度を整えて、世界から様々な人材が集まってくるようにしなければいけない。それなのに、若者が起業したいと思っても、人件費が高くつくから、結局、シンガポールに行ってしまう。そういうことの繰り返しなんです。

 ――なるほど、雇用数の引き下げだったら、多額のカネを注ぎ込むわけでもないし、機能するように変えればいいと思いますが。「制度を悪用される」とでも思っているんですかね。何で、こんな形だけの経済政策に終始するのでしょうか。

 糸数:要するに国は、沖縄が経済的に自立したら困るわけですよ。つまり、「基地はいらない」となっちゃうから。

 ――沖縄経済が本当に機能してしまうと、国が困った事態に陥るわけですね。

 糸数:そうです。だから、「アメとムチ」(の政策)なんですよ。こっちで(補助金という)アメをあげながら、片方ではムチで自立できないような状況に追い込んでおく。それが国の政策ですね。

 ――なるほど。糸数さん、もう1点だけ、どうしても聞いておきたい質問があります。

 糸数:防衛と憲法改正の問題でしょ。

 ――その通りです。やはり、安倍政権になって経済や社会に明るさが出てきた、と。しかも支持率も高い。安倍首相は当初から言っていた改憲などの問題に手を付けやすくなっている。

 糸数:沖縄の視点で言えば、憲法は変えてほしくない。やはり戦争体験者がまだご健在ですから。その声が私の選挙に大きく影響したんです。「憲法を変えないでほしい」「また戦場になるのはごめんだ」と。沖縄はこれ以上、犠牲になりたくないので、憲法は絶対守ってほしいんですね。(憲法)96条も9条も、もちろん守ってほしい。これは、相手の候補もそう言っていましたけど、やっぱり(自民党は)信じてもらえなかった。だって、安倍さんが、憲法を変えたいわけですから。

 それから防衛問題に関しては、残念ながら8月の与那国町の町長選挙は、47票差で(陸上自衛隊誘致推進派に)負けちゃったんです。でも、「自衛隊を持ってきたからといって、経済が自立できるわけではない」と思っている町民は多い。

 「ひめゆり」の教訓

 ――3選となった現町長は、得票差が前回よりずいぶん縮小しました。複雑な住民感情を表しています。

 糸数:配備されれば賃貸料が入るし、そういうことが選挙にも影響していました。

 それともう1つ、やっぱり尖閣問題もそうですし、日台漁業協定が結ばれたので、台湾の漁民との軋轢が大きくなってきました。また協定違反も出てきて、すごく緊張が増している。だから安倍政権は、ここで外交力を発揮すべきだと思うんです。積極的に、韓国や中国、台湾と交渉していく外交力が問われていると思うんですね。武力でなんとかする発想に行くと、一番危ない目に遭うのは沖縄ですよ。

 だから、戦争が勃発するような事態だけはどうしても避けたい。憲法を守りながら、外交力で話し合って、平和的に解決していく。これが一番ベターで、私はずっと選挙でそのことを言ってきました。それが県民に受け入れられたわけです。

 でも今の安倍政権は危ういと思います。正直言って心配です。どんどんメディアも含めて、そういう(戦争への)方向に行きつつある。ひめゆりの先生方が、「戦争って、すぐには来ないよ」と言います。だから、ひめゆりの先生方が、今、とても安倍政権に対して危機感を持っていらっしゃる。「こうやって、全部、準備されていくんだよ」と。私も同じ思いですね。

 ――「ひめゆり」とは、沖縄戦で看護活動にあたった女子師範学校などの女子学徒隊ですね。その数少ない生存者の方が、そうおっしゃっているわけですか。

 糸数:戦争体験者ですから、今の変化に敏感です。でも、彼女たちは戦場に出ていった時は、当然だと思っていたんですよ。そう教育されてきたから。今、教科書で慰安婦問題などを、どんどん記述を変更している。それは、一歩一歩そこ(戦争)に近づきつつあるんだ、と戦争体験者は見ているんです。竹富町での、教科書問題もその1つでした(編集部注:八重山採択地区協議会が「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書を答申したが、竹富町が採択せず、文部科学政務官が是正に動いた問題)。戦争体験者は、「ある方向に行こうとする動きは、すべて沖縄から試されていく状態になっている」と言います。だから、どんなことがあっても、今年の参院選は負けちゃいけない、という思いが県民を駆り立てていたんです。

 でも、私は勝ちましたが、(日本の)選挙全体では負けちゃいましたから。これだけ、衆議院も参議院も自公が圧倒しているので、この先はどうなるのか。戦争体験者は「怖いね」とおっしゃいます。

 ――そうなると、ますます糸数さんへの期待が高まる。

 糸数:そうですね、全国から講演依頼が来ています。でも、体は1つしかありませんから。

 それと、メディアに対しても、非常に心配しております。テレビを見ていても、どっちかといえば(憲法を)変える方向に誘導する中身の番組が目に付きます。もちろん、選ぶのは国民ですけど、どんどん誘導されている気がします。「この憲法は古いよ」とか「変えなきゃね」と。戦争を体験してない戦後世代が、政治の中枢にいるわけですし、経済の中枢にいるわけです。世代が交代している中で、笑いの中に(思想を)入れ込んでいって、何となくみんながいいような気になっていく。

 また、それ(改憲)以外のことで日常生活は回っていくので、なかなかそこに気持ちが行かない。気が付いてみたら憲法が変わっていて、何もかも変わっている。で、徴兵制になりました、と。はっと気付いた時には遅いんですね。それを戦争体験者は心配しているし、そういう危機感を持った人々が、私を当選に導いたと思っています。

※「日経ビジネスONLINE」 2013年9月18日(水)「キーパーソンに聞く」コーナーに掲載。
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130917/253490/?P=1 

by itokazu-keiko | 2013-09-19 10:36 | 報道
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