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糸数けいこの活動日誌
by itokazu-keiko
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沖縄女性と基地問題-北京JAC4月号に

●地域からの発信 ~沖縄~ ●
 沖縄女性と基地問題    参議院議員 糸数 慶子

 <マイノリティとしての沖縄女性とその苦難>
 国連の女子差別撤廃委員会が日本政府に提出した勧告のひとつに「マイノリティ女性」に対する差別の撤廃があります。沖縄女性は、在日コリアンやアイヌ民族、被差別部落出身の女性とともに「マイノリティ女性」として位置づけられ、女性差別と同時にマイノリティとして差別を受けている、と認知されているのです。この中で被差別部落以外は、北海道、沖縄、朝鮮と、明治政府によって、統合・植民地化された共通の歴史をもっています。したがって「マイノリティ女性への差別」というとき、日本の植民地主義的差別と同時にそのひずみからくる女性への人権侵害、さらに差別によって生じてくる貧困、社会的混乱によって、女性たちの抱える問題 はより深刻なものがあります。
 第二次世界大戦において日本政府は、米軍が本土上陸するまでの時間を稼ぐために沖縄を防波堤とし、凄惨な地上戦を行って多くの民間人犠牲者を出しました。戦後沖縄は日本から切り離されて米軍占領下に入れられ、県民の人権が踏みにじられた期間が27年もあったのです。沖縄女性は戦後から今日に至るまで、米兵・米軍属による性暴力に苦しんでいます。収容所のなかで、あるいはそこから畑に行く途中で、子をおぶっていても、家族や友人らと一緒にいても、女性は米兵の性暴力の犠牲になりました。暴行されたことを内緒にしていても、親と肌色の違う子どもが生まれたことで発覚し、離縁されることもありました。米兵による性犯罪は一昨年も去年も起きており、実際は統計以上の女性や子どもが犠牲になっています。
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  【「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」米兵による婦女暴行に対し、県基地対策課へ要請(2012年8月21日)】

 <阻害される経済発展と貧困問題>
 沖縄県は日本全体のなかで、0.6%の面積しかありません。その小さな島に、全国にある米軍専用施設の75%が集中しており、沖縄本島の約2割の土地が基地に占められています。このような状況下では経済発展は思うように進みません。 1972年の「日本復帰」から2011年の40年間の累計で10.2兆円もの予算が沖縄振興のために費やされました。この間、政府が沖縄で主にやってきたことは、道路やダム、箱物をつくることでした。確かに必要な事だったとは思いますが、そういった投資資金は沖縄に留まらずに本土企業に吸い取られ、地元企業が潤うことはほとんどありませんでした。そのため莫大な予算投入を以ってしても、沖縄の県民所得は全国最下位のままです。失業率、高校・大学進学率、大卒初任給平均もすべて全国最下位。沖縄県は若年層の婚姻も多く、また離婚率も高いため、若い女性のひとり親家庭が珍しくありません。結婚相手の収入が少なく子どもを養えない。そのために離婚に至り、子どもを連れて実家に帰る若い母親たちや未婚の母は、手に職がなく昼間の仕事は見つかりにくいのです。運よく就職できても非常に低賃金です。そのため子どもを祖父母や夜間保育所に預けて夜の仕事を始める女性が多くなります。もっと悪いことに、子どもだけを家に残して働きに出るネグレクト家庭も出てきます。こうした家庭で育つ子どもたちは、思春期になると問題行動が増えます。沖縄では子どもの養護相談が全国の二倍、非行相談が三倍と非常に多いのです。ちなみに児童虐待相談の件数も大型都市並に多いにも関わらず、防止策や保護所などの施設が極端に乏しく、対応できていません。
 復帰してからも長く貧困にあえぐ県民には、子どもや貧困家庭の救済という考えがなかったと思います。また、県議会や行政が基地問題に振り回されるあまり、福祉の問題を後回しにしてしまったことも問題でした。基地は爆音や環境汚染、米兵、米軍属による事件・事故のみならず、福祉の面まで悪影響を与えているのです。
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  【「沖縄子どもを守る女性ネットワーク」(最近は男性も入っています)勉強会にて
(2013年9月14日)】

 <沖縄女性たちの取り組み>
 女性や子どもの貧困問題解決のため、私は2011年に「沖縄子どもを守る女性ネットワーク」を沖縄の市町村議員とともに立ち上げ、勉強会や講演会等を開催するなどの活動を行っています。沖縄県内では他にもシングルマザーを助ける「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」や米兵との付き合いに悩む女性を支援する「ウーマンズプライド」、性被害にあった方の相談を受ける「REICOレイコ」(「強姦救援センター沖縄 REIKO」)等、様々な団体が女性支援に乗り出しています。最近では、性被害にあった方がワンストップで被害への対応が取れる「ワンストップ支援センター」の設立のために県内の女性議員や各団体が取り組み、実現しようとしています。また、1995年の米兵による集団少女暴行事件が起こった際に、私も関わって設立した「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は今でも活発発に活動しており、県内で米兵による女性暴行等の事件が起こる度に米軍への抗議等行っています。このように、沖縄では、女性たちが力を合せて現状を変えていこうと努力し、またその努力は実を結びつつあるのです。
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  【「知事は公約を守って辺野古埋立を認めないで下さい 女性集会」
(2013年12月10日)】

 <米軍普天間飛行場問題>
 1995年以降、メディア等でよく話題になる米軍普天間飛行場は、宜野湾市の真ん中、市街地のなかに存在しています。周囲には保育所や小中学校、大学、病院などがあり、米軍の安全基準を満たしていません。つまり、米本国等では決して許されない危険なつくりになっています。日本の航空法も適用されておらず、完全な無法状態です。基地から発生する爆音のために多くの住民が苦しんでおり、何度も訴訟が起こされています。ヘリが大学に墜落する事故もありました。その上過去に何度も墜落している垂直離着陸機オスプレイが配備され、周辺住民は常に危険と爆音にさらされる状態にあります。このような迷惑施設を早く撤去してほしい、と思うのは自然なことであり、また、政府もそれを約束したのです。ところがその後18年も放っておかれている。この責任は非常に重いと思います。普天間飛行場は県内の名護市辺野古に移さなければならない、とする考えが政府にあります。しかし、すでに島の2割を基地に占められて経済発展が阻まれており、これだけ問題のあるなかで、更なる負担を押し付けることは、法の下の平等や人権の観点から許されることではなく、まさに沖縄に対する差別だと思います。県外の方々も是非、この問題に目を向けていただきたいと思います。

※世界女性会議ロビイングネットワーク マンスリー「北京JAC」第185号(2014年4月1日発行)4~5ページに掲載

by itokazu-keiko | 2014-04-21 19:20 | 報道
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