「癒やしの島」伸びる観光
戦後の沖縄観光は沖縄戦の戦没者遺族たちの慰霊の旅から始まった。1950年代半ばから旧日本兵をまつる慰霊碑が次々と建てられた。本土では、女子学徒を殉国者として描いた「ひめゆりの塔」(監督・今井正)が公開され、大ヒットした。
56年の観光客数、1万3千人
戦跡を案内する地元のバスガイドたちは、兵士たちの敢闘をたたえる説明を繰り返した。参院議員の糸数慶子(67)もかつては、哀調に満ちた殉国美談を語るガイドの一人だった。
「『遺族にハンカチを握らせなかったら半人前』と言われた時代。沖縄に来てくれた人たちの心を慰めるのは当たり前だと思っていたし、自分たちの喜びでもあった」
観光地沖縄にとって、本土は「客」だった。
だが、糸数はその後、本土目線に迎合する観光ガイドのありように疑問を抱くようになる。住民の視点から沖縄戦の実相をありのままに語る「平和ガイド」の先駆けとなったのは70年代半ばだった。
75年、155万人・・・・・・
※「朝日新聞」2015年6月8日2面「戦後70年 第4部 沖縄 中」一部を抜粋